普段、わたしたちが何気なく通りすぎている、数多くのお店。その中に、気にはなるけど、一人で入るにはちょっと勇気がいる。そんなお店は、ありませんか?この連載では、誰もが知っている“話題の人気店”とは一線を画した、地元民でも知る人ぞ知る、隠れた名店をご紹介。さぁ、勇気を出して。あなたも一緒に、その扉を、開けてみましょう。
花と食事と、スイーツと。
今回ご紹介するお店は、淡路島の北側。の住宅街にひっそりと佇む、3階建て新築住宅。その1階にあるのが、「Plants Caféコハルビヨリ」。国道28号線を北へ向かって走り、東浦バスターミナルの一歩手前、左手に見えて来る松帆神社の鳥居が目印です。
「プランツカフェ」の名の通り、入口や庭には、色とりどりのキレイなお花たちがたくさん並べられています。もちろん、購入も可能。その可愛らしいお花の数々に、自然と心が癒されます。
そんな素敵なお出迎えのあるカフェは、やっぱり扉だってオシャレ。柔らかみのあるペールトーンのグリーンのドアが、優しい気品を漂わせます。では、気になるプランツカフェとは一体…いざ、扉開けてみました!!
クリーンなイメージとは、まさにこのこと!その清潔感いっぱいの店内に、なんだか呼吸までしやすくなった気分です。(笑)
そして、一軒家とは思えない開放感。常にフレッシュな空気が流れているように感じてしまうのは、いたるところで存在感を放っている、植物たちのおかげでしょうか。
そしてその空間が良く似合う、“プランツコーディネーター”の西口晶代さん。本当に、いつも見とれてしまうほどお美しいのです…。
ここ、コハルビヨリは、14時までのランチと18時までのカフェ。そして金曜・土曜日限定のバル(20:30ラストオーダー)を営むお店です。
ランチタイムは、メインが変わるコハルビヨリランチとピザランチ、そしてちょっと贅沢だけどリーズナブルな淡路島牛ステーキランチの3種類から選べます。それぞれに淡路島の食材を使うのはもちろん、「プランツカフェ」だけあって、やっぱり食事にも食用花やハーブが、サラダやスープなどの盛り付けに添えられています。
姪っ子さん担当のスイーツにも、キレイな花びらが…♡ 今回は、これから最盛期を迎える淡路島の“プチ名産品”でもある「カレンデュラ(きんせんか)」が添えられていました。
コハルビヨリでは、シェフであるご主人が食事を担当し、調理師として大阪のお店などで経験を積んだ姪っ子さんがスイーツを担当。そして、お店の代名詞である全てのお花を、晶代さんが担当されています。そう、「花」と「食事」と「スイーツ」。それぞれのプロが身内で構成された、最強のカフェなんです!
“花の島”淡路島で、育てる楽しみを伝える
晶代さんが教えられている「プランツギャザリング」は、生け花やフラワーアレンジメントのように、切り花を使うのではなく、根がついた状態の植物を扱います。植え込んだ時から美しく、リメイクも可能で、長く育てる楽しみを感じられる、いま話題の技法です。
なによりプランツギャザリングは、鉢植えだけでなく、リースや結婚式のブーケも作れたりと、楽しみ方も豊富!特に注目を集めている結婚式のブーケには、“二人で根を張り生きていく”という意味がこめられ、式の後はお庭に植えて、夫婦二人で育てていくというなんとも素敵な楽しみ方もあるんだとか!
晶代さんによって“ギャザリング”という新しいジャンルの風が吹き始めた淡路島もまた、その昔は「花とミルクとオレンジの島」なんて呼ばれるほど、年間を通してたくさんの花が咲き誇る島。
しかし構想段階では、「そんな高いものは売れないよ!」と周りから言われることもあり、淡路島での花の需要は少ないと覚悟して始められたんだそう。でも、いざ始めてみると、晶代さんが買い付けしてくる珍しい花々に興味を持つ方が意外にも多く、結果として、淡路島には花好きな方が予想以上に多かったことが判明。
「1年くらいかけてじっくりと知っていってもらえれば良いと思っていたので、いま起こっていることは全部、良い意味で想像以上でした。(笑)」
オープンから4カ月、最近は、島外からのお客さんも増えています。
コハルビヨリでは、プランツギャザリングのレッスンを定期的に開催。レッスンの合間に食事やお茶を楽しみながら、ゆっくりと1日を過ごされる方も多く、これから温かくなる時期、益々、その楽しみを求めにやってくるお客様が増えてくるのではないでしょうか。
育てて楽しむ花作り、みなさんもいかがですか?
導きを引き寄せる行動力
晶代さんがプランツギャザリングを始めたのは二年前。きっかけは、会社員時代になんとなく感じた、漠然とした「不安」でした。“このまま定年を迎えても良いのだろうか…”そう考え始めたころ、昔からモノ作りが好きだったこともあり、気分転換に「なにかやってみよう!」と思い立ったが吉日。一般クリエイターが集うアプリを眺めていたら、目に留まった“ギャザリング”の文字。気になりどんどん調べていくうち、転機ともなる師匠と出会い、すぐに弟子入りしたんだとか。
なんとなくお気づきかと思いますが、晶代さんだけでなく、実は西口夫妻、夫婦揃って行動力が凄いんです!2017年2月、西ノ宮から淡路島へと移り住み始めたお二人でしたが、それも飲食店の経営に興味があったご主人の、「ホテルでの仕事が決まった!」という一言が決め手でした。ご主人がホテルで料理の腕を磨いている間、晶代さんは淡路島の景観学校へ通い、まちづくりガーデナーとしての知識を習得。
そしてその中で、わたしが印象的だったのは、晶代さんが景観学校へ通う、その理由。
-もっと淡路島のことを知りたかったから-
同じ移住者であるわたしにとっては、とても感慨深い一言でした。
自分のやりたいことを実現させていくときには、自分の思いや勢いが先行してしまいがちですが、晶代さんのその言葉には、「知らない土地で挑戦させていただくのだから、まずは淡路島のことを知らなければいけない」という、淡路島に対しての敬意を感じました。
晶代さんが学校で出会った様々なフィールドで活躍するお友達とは、いまでもご縁が続き、お店で扱う野菜やお米を仕入れさせてもらったり、お客さんとしても、たくさんの方が来てくれているのだそう。
そして、移住前から始まっていた物件探し。「最初は、海が見える場所を探していました。」しかしなかなかいい場所が見つからず、ある方に相談したところ、それまでずっと“海が見える場所”と強く凝り固まっていた考えを解く、目から鱗のアドバイスを受けます。
「みんな、あなたの花を見に来るんだから、海が見えなくても大丈夫!」
おかげで本来の目的を思い出し、結果的に徒歩圏内で海まで行ける、いまの土地へとたどり着きます。
「考えてみたら、地元の方にたくさん来てもらいたかったので、海が見えなくても良いと思ったんです。もちろん、私達にとって海は憧れですが(笑)それに、お店をするなら絶対に街の方がいい。島外への通いやすさも住みやすさも含めて、いまはこの地で良かったなと感じています。」
案外、思い描いていた通りに創り上げていくよりも、やりながらも、「やっぱり違う」を何度も繰り返していく方が、結果として良いモノが出来たりするもの。
そんな、一見、運が良く見えるような晶代さんの人生ですが、実はこの行動力こそが、全ての導きを引き寄せていたりして…
扉を開けてみたら…
全ての経験と学びを無駄にせず、第二の人生を心から楽しむ、華のある生活がありました。
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Plants Café コハルビヨリ
所在地/淡路市久留麻3-1
営業時間/11:00-18:00(金・土21:00まで)
定休日/火曜日・水曜日
TEL/0799-70-1913
Mail/koharubiyori.a18@gmail.com
写真・記事:藤本沙紀