普段、わたしたちが何気なく通りすぎている、数多くのお店。その中に、気にはなるけど、一人で入るにはちょっと勇気がいる。そんなお店は、ありませんか?この連載では、誰もが知っている“話題の人気店”とは一線を画した、地元民でも知る人ぞ知る、隠れた名店をご紹介。さぁ、勇気を出して。あなたも一緒に、その扉を、開けてみましょう。
■額縁に魅せられた店主
記念すべき初回にご紹介するお店は、南あわじの西側。時折、明るい子供たちの声が響いて聞こえる、西淡中学校の裏手にありました。その名も「NeKi 額縁と珈琲」。
階段を上ると、見えてくる入り口。ここは以前、お花屋さんだったそう。その頃のまま引き継がれているウッド調のドアが、とってもオシャレな雰囲気を醸し出しています。高まる期待と緊張感…いざ!その扉、開けてみました!!
まず目に飛び込んできたのは…。縁!?
ここにも!!
店内の、いたるところに縁が飾られています!!
そう、ここは珈琲を飲める、“額縁屋さん”。ということでひとまず、珈琲を注文してみることに。
…お気づきでしょうか。なんと珈琲も、額縁に乗せられて出てくるんです!!
店主の加藤さんいわく、「トレーになるものがなくて、額縁に乗せてみたらちょうど良かったから。」これぞまさに、発想の転換。店名にもある「額縁と珈琲」という、ちょっと小粋でカッコ良すぎるコンセプト通り、店主のその“額縁愛”に、一本取られ、しばしの間、脱帽してしまったのでした…
■大切なモノや瞬間を「納める」
美術関係の短大に通っていた加藤さんは、学生の頃、道具を扱うお店でアルバイトを始めたことがきっかけで、額縁に魅力を感じるように。美術館へ行くと、作品よりもまず、額縁に目がいってしまうほどだったんだとか。作品を納め、守り、そして作品を引き立てる役割を担う額縁は、加藤さんにとって、主役そのものとして映ったのでした。
「額縁×珈琲」という、いままでにない新しい切り口が生まれたのは、30代の頃。友人が沖縄で始めたハワイアンカフェの立ち上げに携わった際、「そこで奥さんがフラダンスを披露したり、お客さんに教えたりしていて、“飲食とは関係ないところでも人が集まり交わる場”になっていたことが、衝撃的だったんです。」
それから東京へ戻り、額縁についてのノウハウを学び、修行すること7年。東日本大震災を受け、様々なタイミングが重なり、ご縁があった淡路島へと移住し、待望の「NeKi 額縁と珈琲」を昨年6月にオープン。
思い出の写真はもちろん、自宅に眠っていた頂き物の絵画、また個展で飾る作品依頼など、その人の大切なモノや瞬間を切り取り、そして納めるという、実はとても重要な役割を担う額縁は、淡路島の人から広く受け入れられるように。「額縁は値段が高いというイメージを持たれがちだけど、手頃な価格の規格フレームも取り扱っているので、若い人にももっと身近に感じて欲しい。」そう語る加藤さんのやりがいは、“うまく納まって、うまく飾れた瞬間”。
「だから“売る”というより、その人が“やりたいことを手伝う”感覚なんです。」
扉を開けてみたら…
そこにはお客さん一人一人の見たい景色に寄り添い、それを額縁というフィルターを通し実現する、新しいコミュニケーションのカタチがありました。
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NeKi 額縁と珈琲
所在地/兵庫県南あわじ市松帆古津路577-104-2F
営業時間/水~土 AM7:00-PM17:00 (月曜不定休)
定休日/日曜日・火曜日
TEL/0799-38-4854
Mail/info@ne-ki.net
写真・記事:藤本沙紀